寺院において宗派・宗門とはどのような関係になるのでしょうか? 考えてみましょう。
1 1号法人と2号法人
宗教法人とは,宗教法人法の規程に基づいて法人格を与えられた宗教団体をいいます(宗教法人法第4条)。また「宗教団体」とは,教義の宣布,儀式行為の執行,信者の教化育成の3つを主目的に,礼拝の施設を備える団体をいいます(1号法人,同第2条1号)。
これら宗教団体は「単位宗教団体」とも呼ばれ,これら単位宗教団体を包括する教派,宗派,教団,教会,司教区などのことを「包括宗教団体」といいます(2号法人,同第2条2号)。
この包括宗教団体とは,共同の宗教的目的をもった単位宗教団体(=被包括宗教団体)が複数集まったその団体としての組織を意味します。
ところで,包括宗教団体を持たない単位宗教団体も存在します。そのような寺社を被包括宗教団体と区別して「単立宗教団体」と呼びます。
2 包括被包括関係の意味
包括宗教団体法人は被包括宗教法人を支配・統括している印象を与えますが,包括宗教団体と被包括宗教団体との間には法律上の上下関係,支配関係は存在しません。
法律上,両当事者はあくまでも対等な立場にあり,一方が他方を支配する関係にはないものとされます。
ただ,被包括宗教団体は包括宗教団体の一環としてその活動をする以上,宗教団体としての統一性・画一性を維持する必要があります。したがって,その限りにおいて被包括宗教団体は包括宗教団体の指導を受けることはあります(包括宗教団体の治教権)。
包括被包括関係の具体的な規律については,それぞれの教義の内容など宗教事項と密接不可分に関連する問題であって,その性質上法律にしたがい一律に規制することにはなじまないことから,規律の詳細についてはそれぞれの宗教団体内部の自治に委ねられていることになっています。
これを受け,ほとんどの包括宗教団体は,被包括宗教団体を規制する内部規程を独自に設けているのが通常です。包括宗教団体としてはそうすることによって,教義やその解釈について一定の方向性を示し,信仰の正否にかかる判断の指示をします(指教権)。
これを具体化したものが,宗憲や宗規といった根本規範,その細則である規定を含む一連の規則である宗制です。
これら規則において,被包括宗教団体は包括宗教団体の指示に従うとの記載がなされているのが一般的であり,その場合,宗制による自治規範の効力として,被包括宗教団体は包括宗教団体の治教権下に置かれることになります。
3 包括関係の廃止(単立化)
被包括宗教団体としては,包括宗教団体の指示内容と自身の考えが合わない場合,所定の手続をとることによって包括被包括関係を廃止することができます。
廃止に至る理由としては,宗教の教義内容に相違が生じたことが最たるものです。もっともその他には,懲戒処分等の不利益を受けることを回避するため,住職等の人事への不満なども多いところです。