「遺贈」と「死因贈与」の差異

自身の死亡を原因として,残された人に財産を無償で渡す法律行為には,「遺贈」と「死因贈与」があります。

「遺贈」は,遺言書の文中で「自分が亡くなったら誰々に何々の財産をあげる」という財産を渡す側の一方的な意思表示で行いますが,
「死因贈与」は,財産を渡す側ともらう側の双方の合意が必要な「契約」であるという差異があります。

「遺贈」は,遺言を書き換えればいつでも自由に撤回できます。
「死因贈与」も民法の遺贈の規定に準じ,贈与者の最終意思を尊重する観点から贈与者の一方的な意思で撤回できるとされています(最判昭和47年5月25日)。

ただし不動産を死因贈与する場合,予め「仮登記」をしておくことで受贈者の承諾が無ければ実質的に撤回しづらくさせることもできます。
「死因贈与」は,不動産をもらう側が将来確実に財産を受け取れる仕組みとして活用の余地があるといえます。

さらに,「負担付死因贈与契約」を締結し,受贈者がすでにその負担を履行した場合,贈与者は自由に撤回することができなくなります(最判昭和57年4月30日)。

例えば,高齢で自宅に独居の父親がいる際に,父親本人が自宅で生活できるうちは長男が同居をし,生活費の援助や介護等の生活支援を行うこと(負担)を条件に,自宅を本人が死んだら長男に譲るという内容の契約が,「負担付死因贈与契約」です。

長男が「負担付死因贈与契約」に従い,父親と同居をし老後を支援できたのであれば,その契約と矛盾する内容(自分が死んだら自宅は長女に相続させる旨)の遺言書があったとしても,その死因贈与契約の方が採用されることになります。

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